滔想 tōsō

開設 2023年1月17日 火曜日 午前3時51分58秒

Valentine's Dayはダイエットの敵に非ず

 子供の頃、運動会と並んで大嫌いだったのがこのバレンタイン・デーだ。

 

 振り返ってみると2月14日には嫌な思い出しかない。こんな日を楽しめる様な人間として私は生まれてきていない。運動会はその年々で開催日が違うし、大人になるとその様なイベントも無いので思い出すことも少ないが、こうやって日付が決まっているとどうしても思い出さざるを得ない。商業施設も大々的にこの日を書き入れ時にしようと必死になっているので、いつの間にか流行り出した恵方巻きの節分を過ぎれば、私にとっては切ないこのお祭り騒ぎに身を置かなくてはならず、気分が悪い。

 

 チョコレートを貰うことに何の価値があるのかと、冷め切って割り切って居られる私じゃなかった。内心、とても欲しかった。それなのに、周りの誰もがクラス全員に配布されたような義理チョコの一つくらいを手に学校からの帰り道をはしゃぐ中、私は何も持たずという事もざらに在った。

 

 幸い、義理チョコを一度も貰ったことが無い訳では無い。片手で数えられる程の経験はある。でも貰ったら貰ったで一月後に迫るホワイト・デーを意識しなければいけないことが苦痛だった。仲の良い友達とこの話題について何気なく話せる様な私じゃなかった。妙に強く意識してしまう。どうも私には女性との付き合い方に難があるのだと思う。姉妹や従姉妹は居らず、同世代の異性の幼馴染が居なかったのも私の不器用な性分を拵えるのを手伝った。

 それに、義理チョコを頂ける様な頃には、周囲の人間は本命チョコを頂戴する時分になっていたので、義理チョコ程度でたじろぐ自分の姿を他人に見せたくないとの気持ちもあった。

 

 バレンタイン・デーなんて無ければ良い。これが今までの一貫した私の本心だ。

 

 しかしこの日を理由にして、アーモンド・チョコレート一箱を手元に置いて今夜過ごそうと考えている私が居る。

 嬉しいことに、この一箱以外の成分やカロリーを気にする必要はない。例年通り、誰からもチョコレートを貰えなかったから。

 

 慰めのチート・デーを独り楽しむつもりだ。